ジルコニアカスタムアバットとジルコニアセラミックスの製作法
はじめに
インプラント補綴において、今日、金属を使用したアバットメントの使用が多用されているが、金属色のアバットメントにより、上部補綴物にオールセラミックスの補綴時に光の透過性及び、明るさの妨げとなってしまいます。
アバットメントの金属の上にセラミックスを焼き付けたり、被せたものは現在多数市場にて見かけます。アバットメント自体が、そして上部補綴物が全てジルコニアセラミクッスで補綴可能であるならいかがでしょうか?
ジルコニアとは
酸化ジルコニウム(ZrO2)のことを一般的にジルコニアと呼んでいます。
一般的な性質としてジルコニアは2700℃近い高融点の物質で、低熱伝導率、耐熱性、耐食性、高強度等、多くの機能を有しています。
しかし、ジルコニアは温度帯によって結晶の形が変わっていしまいます。
純粋なジルコニアの場合、1000℃で単斜晶から正方晶に相転移を起こします。このとき体積が大きく変わるため、ジルコニアセラミックスは割れてしまいます。
ジルコニアセラミックスは混ぜ物をして温度を上げても相転移を起こさないようにしてあります。一般的にはMgO(酸化マグネシウム)、CaO(酸化カルシウム)やY2O3(酸化イットリウム)、Hf(ハフニウム)等を混ぜます(これらを安定化材と呼びます)。これらの安定化材が結晶に十分な量溶け込むと、ジルコニアは液体になるまで転移を起こすことがなくなります。歯科界ではY2O3(酸化イットリウム)、Hf(ハフニウム)(ハフニウム(Hf)は、天然のジルコニアに、2%程度含まれる成分である)などの安定化材が使用されている。微量のアルミニウムが添加してあるが、焼結温度を下げるためで、焼成温度が低いほど微粒子構造のジルコニアとなり、生体親和性も上がります。
ジルコニアセラミックスの純度はジルコニア+ハフニウム+安定化剤の純度を指すことになります。自社にて使用しているTizian Blanks(ATD Japan社)では、主成分:酸化ジルコニア93.28−93.88%、ハフニウム<1%、酸化イットリウム4.95−5.35%、酸化アルミニウム0.15−0.35%、酸化珪素<0,02%、曲げ強度:約1200MPa、弾性係数:210GPa、硬度:1200HV10と表記されています。つまり、ピュアに近いジルコニアとなります。
成分例:現在公に表示している歯科メーカーのみ記します。
A社 主成分:酸化ジルコニウム(89.2%)、イットリウム(5%)、曲げ強度:約900MPa、 弾性係数:210GPa
B社 主成分:表記なし曲げ強度:約950MPa、硬度:1290HV5
C社 主成分:酸化ジルコニウム(94.4%)、イットリウム(5.4%)曲げ強度:1200MPa
ジルコニアの特性
主な特性としては、 強度(1200mpa)、靭性が高く、耐摩耗性に優れている、熱伝導率が低く断熱性が良い。熱膨張率が金属に近い。耐食性、耐薬品性に優れている、比重が金属に比べ軽い(6.05g/cm3)、メタルフリーにて補綴できる、これらの特性を生かし、審美性に優れ、生態親和性の高い歯科材料として使われています。 現在、ジルコニアセラミックスの特性を生かし、歯科界以外では、スペースシャトルの断熱材、車のブレーキ部分、包丁、など精密磨耗部品から大型切削工具まで各産業、工業界で利用されています。
ジルコニア用 3Dパントグラフィック ミリング システムTiZian Mill(タイザン ミルATD JAPAN図1)による製作法
ジルコニアクラウン製作法の流れ
@通常どおりの模型製作
CADCAMではないため、模型の色調にとらわれない、金属アバットに対する製作が可、アンダーカットのブロックアウトの必要がない。
A光重合レジンによるパターン製作(コンピューター3D画像より具体性があり肉眼で確認できる)
Bパターンとジルコニアブロック(図3フルマウスまでのブロックが用意されている)をTiZian Millにセットする
Cレジンパターンをメカニカルスキャンしながら、ジルコニアの切削
Dシンタリング前の形態修正を必要に応じてする
Eステインする(ジルコニアブロックを任意の色調に色づけできる)
FTiZian Mill Hi-temp.ファーネスでシンタリング(1480℃で8時間)
Gポーセレンパウダーの築盛、焼成、完成
1、タイザンミルフローレジン(光重合型レジン)にて、プラスチックコネクターSTEXに 直にレジンアップ及び形態を付加します

2、ベースプレートにプラスチックコネクターを、ミーリングマシンを使い、コネクション部が、垂直になるようにジェル状の瞬間接着剤にて固定します

(アナログを削り垂直固定できるようにしておく良い)。これはアクセスホール、及びコネクト部の正確な再現のために必要となります。
3、左にジルコニアブロック、右にベースプレートを固定します
金属プレートは180度回転するため、アンダーカットが生じても切削できます。

ポストアバットメントスクリューのアクセスホールと、アバットの傾斜の角度差に対しても切削できることになります。
ジルコニアブロックは、シンタリング時に25%収縮するので、ジルコニアの切削時にには25%大きい状態にて切削されることになります。
4,No4,2,1のバーを使いミーリングしていきます。大きいバーより小さいバーに順次交換していき、大きい部分の切削には、大きいバーを使い、細かいところの切削には細いバーを使用します 。アクセスホール用のバーには、1.60oと1.70o2本のトレーサーが用意されています。これは、アクセスホールとポストアバットメントスクリューのフィット感により使い分けるのに有効であります。現在は、EXには1.60oのトレーサーを使用しています。適切なバーとトレーサーを使用することにより、よりフィットの良いジルコニアアバットメントが製作できます。
5、ジルコニアブロックの切削後、


ファーネスでシンタリング(1480℃で8時間)する。

シンタリングすることにより、単斜晶から正方晶に相転移を起こし、口腔内で、安定したアバットメントとなります。

ジルコニアアバットメントの、強度の点より、プラスチックコネクターの基底面の厚みを0.5oほど厚くしなければなりません。プラスチックコネクターをそのまま使用した場合、厚みが0.5oであるため
(図18のAの厚み)20N・pのトルクに負けてしまいま破折します

いくら強靱な物質であっても、薄くては強度がなく壊れてしまいます。しかしながら、厚みを0.5o増すことにより、50N・pのトルクに十分耐えられることが、IMLANTOR NEO (JMM社)による、実験によりわかりました。

残念ながら、どこまでが限界であるかは、それ以上のトルクをかける機械を所持していないため、現在結果は出ていません。また、ポストアバットメントスクリューのネジ山の勘合はプラスチックコネクター時には5回転であり

ジルコニアアバット完成時には3回転半となるが、2回転半以上の勘合によりポストアバットメントスクリューの強度並び、ポストアバットメントの保持は保たれるそうです(JMM談)。ポストアバットメントスクリューの強度は最低30N・p以上に耐えうるよう設定してある(JMM談)ため、当社では、30N・pのトルクドライバーを使い確認しています。また、立ち上がり部(外部)を補強することも可能ですが、全てのケース(フィクスチャーの埋入位置、ガムの状態など)に、対応できかねないため、内部補強が有効と思われます。

6、通法により、模型製作をし、レジンアップ後、レジンの収縮防止のため、連結部は1度切り離して、新たに微量のレジンにて固定します。

メカニカルスキャンしながら、ジルコニアの切削
シンタリング
ジルコニアフレームの完成です。
7,ジルコニアブロックは必要とあれば、切削後、シンタリング前に、色づけをすることも可能です。
8バーの説明

左より、アクセスホール用のバー 、1.7o、1.6oトレーサー4o、2o、1oのバーとトレーサー、インプラント用0.5oのバーとトレーサー、アンダーカット部、及び、基底面用バーとトレーサー

左より2.06o、2oのトレーサー、バー
9,口腔内にジルコニアカスタムアバットのセット

10,ジルコニアオールセラミックスのセット(ヴィンテージ ZR松風使用)

まとめ
ジルコニアアバットの製作においては、ジルコニアの特性を十分に知り、それぞれの補綴形態に合った、メカニカルスキャン故に技量が必要となるが、センターラボ形式ではないため、短時間にて製作できるメリットがあり、また、JMMのEXシリーズの対応に当たり、プラスチックコネクターの特性を十分に生かすことが出来ると思われます。CADCAMにおいて製作されているジルコニアアバットでは、センターラボ形式のため、アバット基底面の厚みの設定や形状において細かいデーターの蓄積、及びプログラムのバージョンアップが必要となるため、かなりの時間と労力が必要となるでしょう。
これからの歯科界においては、ジルコニアによる補綴処置はますます多様化してくると思われますが、今後も研究してゆきたいと思います。